視聴者から反発を買った日テレ「愛してたって、秘密はある。」のHulu連携

日テレの2017年7月クールドラマ最終回で日テレが思わぬ行動に。

www.j-cast.com

最終回で新たなストーリー展開を追加し「完結編はHuluで見てね」との告知がなされたようです。記事中で紹介されているコメントが的を射ています。

「10話掛けて、Huluの番宣だったとは思わなかったよ...」 

 放送局が各種サービスを連動させて全体の収益拡大を目指すのは理解できるのですが、誠意あるやり方ってものがありますよね。流石にこれはやり過ぎでしょう。

 

■Huluの業績

Huluの有料会員数が2017年度第1四半期の決算説明で報告されていますが、システム移行が原因で会員数が減少したとのこと。だいたい、www.happyon.jpって何?って感じもします。これまで米国Huluのプラットフォームを使っていたけど自由度が低かったので、自前のプラットフォームに切り替えたらしいですが。

 

<Hulu有料会員数推移(出典:日テレIR資料)>

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有料会員数は6月末時点で1,547千人だそうです。

この数字から年間売上額を推計すると、933円×1,547千人×12ヶ月=17,320百万円。約173億円の売上です。

ここからシステム費用、配信費用(CDNのコストなど結構高いらしい)、コンテンツ調達費、権利許諾費(著作、出演者、楽曲など)、プロモーション費(日テレ分は相当安い?)、人件費、米国Huluへのロイヤルティ支払いなどが発生していると思います。

Huluについては黒字化がずっと先延ばしになっています。下記日経の記事は、2018年3月期の黒字化目標を2019年3月期に延期と報じています。

www.nikkei.com

 

■HuluよりNetflixの方が個人的にはお気に入り

ちなみに私はHuluを3年くらい利用しましたが、昨年契約を打ち切りました。Huluを使ってみての感想と評価は以下のとおりです。

  • Huluは日本のコンテンツが半数以上を占めており、海外ドラマ好きの自分にとって面白くない(これはコンテンツ嗜好によって評価が分かれるところです)
  • 配信が不安定。ネット結線テレビで視聴していると、時々映像がカクカクし始める。
  • ひかりTVも契約していたが、コンテンツの多くが重複して独自性が低い。
    オリジナルコンテンツもあるが限られていて、しかも日テレ制作が増えるとチープな番組が多くなった。
  • スマホで自宅外視聴を行うとパケット消化が増えるが、ダウンロード視聴ができない。また、通信環境が不安定な場合はスマホで動画がスムースに再生されない。

なので今はひかりTVも解約し、Netflixメイン、amazonプライムサブの利用に落ち着きました。Netflixを視聴し始めて感じたことは以下の通りです。

  • オリジナルコンテンツが充実している。これらはNetflixでしか視聴できない。
    有名どころではHouse of Cardsがありますが、それ以外にも制作費をかけたドラマが沢山配信されています。ハリウッド制作のアメリカドラマと遜色ない作品が多く、結構楽しめます。
  • スマホでダウンロード視聴できるので、パケット使用量を気にしなくてよい。
    これはamazonプライムも同様です。パケット上限に達して困ったことがあるので、安心してスマホで動画を視聴できるのは有り難いことです。
  • リコメンドがまずまず。
    ちょっと安易なリコメンドも目に付きますが、視聴コンテンツに応じて紹介されるコンテンツはまずまずです。

■フジテレビFODについて

2017年7月末、フジテレビFODの累計ダウンロード数が500万を超えた、というリリースがありました。

www.fujitv.co.jp

ただし、見逃し配信「プラス7」のユーザーも同じアプリを利用しているので、500万ダウンロードのかなりの部分は無料配信ユーザーだと思います。

FODの有料会員数は総務省「放送を巡る諸課題に関する検討会(第14回)配付資料」(2016年12月26日)によると約80万人と記載されています。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000456532.pdf

ちなみに東洋経済の記事によると、2015年10月時点でも有料会員80万人と取材に答えていますので、1年間有料会員は増えていないようです。

toyokeizai.net

大多亮氏がどこかの新聞取材記事で「FODは勝ち組に残れた」と発言しているのを見かけましたが、月額888円×80万人×12ヶ月=約85億円の年間売上になります。コンテンツはオリジナル番組中心なので調達費は安く済んでいると思いますが、大きな利益を生み出すビジネスになっているとは思えませんね。

余談ですが、2017年7月クールの月9「コードブルー」を見逃し配信で視聴しました。ドラマは安定感のあるよい内容だったと思うのですが、動画CMが酷くて嫌になりました。FODの質の悪い番宣が繰り返し流されるのです。これはFODに対する反感を生み出すだけなので、逆効果としか思えません。FODの有料会員ではないのでオリジナルコンテンツを視たことはありませんが、チープなタレントを使ったチープな番組のCMを視ると、相当低コストで作っている感じがしました。

「コードブルー」がこれほどヒットすると思わなかったので、広告主の出稿が少なかっのでしょうね。だから穴埋めにFOD番宣を入れたのだと思いますが、もう少し番宣の質に配慮したほうが良いと思います。逆に通常のテレビCMの品質の良さを実感した次第です(笑)。

 

■放送局の有料VODサービスについて思うこと

TBSはテレビ東京WOWOW、他と組んで「プレミアム・プラットフォーム・ジャパン」設立を発表しました。定額料金制VOD(SVOD)サービスを行うとのことですが、TBSオンデマンドはこちらに移管するということだと思います。ということは、TBSオンデマンドはうまく行っていないということですね。

テレビはずっと娯楽の王様でした。しかしライフスタイルの変化、嗜好の多様化に伴って少しずつ地盤沈下を続けています。その最大のライバルはインターネットであることは言うまでもありません。

有料VODサービス、無料見逃し配信サービスは放送局がインターネットの世界で戦う重要なサービスになると思います。武器はテレビという強力なメディアを活用できることと、テレビ番組という良質なコンテンツです。

特にテレビ離れを指摘される若年層を、もう一度テレビコンテンツに呼び戻すことを考えると、動画配信はとても重要です。

そんな中で「愛してたって、秘密はある。」のようなやり方を取るのは、健全なビジネス育成をはかる上で得策とは思えません。フジテレビが韓流押しをきっかけにネット住民から反発を買い、ことあるごとに未だに激しく指弾されている歴史に日テレも学ぶべきでしょう。