フジテレビ「コードブルー」の成功と上期業績赤字の噂~フジテレビ単体の業績トレンド

フジテレビ「コードブルー3rd」、低迷を続けていた月9で久しぶりのヒット。

視聴率は16.3%に始まり、最終回(第10話)は16.4%とのことです。

http://no-dorama-no-life.info/5058

第1話:16.3%、第2話:15.6%、第3話:14.0%、第4話:13.8%、第5話:13.8%
第6話:13.7%、第7話:13.4%、第8話:15.4%、第9話:13.9%、最終回:16.4%

一方で27時間テレビも視聴率低下に歯止めがかかったというニュースも流れました。

こういった変化がフジテレビ復活の烽火となれば良いのですが、依然として視聴率低落に歯止めがかからず、2017年度上期は業績赤字との情報も流れています。

「上期赤字確定で賞与ゼロ説まで フジテレビは懐事情も“非常事態”」日刊ゲンダイDigital 記事

民放のビジネスは無料放送ですから、収入の多くは広告費に依存しています。視聴率低下も一因ではありますが、それ以上に広告を出稿する広告主がフジテレビを敬遠しているため、業績不振につながっていると思われます。かつて視聴率三冠王を続け、若い女性の支持を受け、広告主がこぞって出稿していたフジテレビの姿は見る影もありません。

 

■フジテレビ視聴率の推移

フジテレビの年度平均視聴率(世帯視聴率)の推移を確認してみましょう。
グラフの横軸は会計年度です。他のグラフは決算月で表記されていますのでご注意下さい。

また、ゴールデンとプライムは時間帯の多くが重複しているため、視聴率はほぼ同水準です。

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2010年度までフジテレビが視聴率三冠王を獲得していましたが、2011年度にその座を日本テレビに譲っています(正確に言うと、2012年度はテレ朝がゴールデン、プライムでトップ、2013年度はテレ朝がプライムトップ。それ以外は日テレがトップ。)。
一方、営業利益は2011年度(2012/03期)にピークを迎え、翌年から下降の一途をたどっています。
こうしてみると、フジテレビの病はリーマンショックをきっかけに進行し、過去の勢いが失われ始めた2012年度あたりから表面化してきたと考えて良さそうです。

 

■フジテレビの利益推移

フジテレビの凋落を示す決算数字をグラフにしてみました。フジテレビホールディングスのIR資料からフジテレビジョン単体の利益を抜き出しています(単位:百万円)。

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2008年秋に始まったリーマンショックの影響をフルに受けた2009年度(2010/03決算)。この年は大きく利益が減少しました。その後、一旦持ち直したように見えますが、2011年度~2012年度をピークに利益水準が急降下しています。

このトレンドを延長すると、2017年度上期の赤字決算も十分ありえそうです。

2011年7月に地上放送のアナログ放送が終了しました。その際に、フジテレビのチャンネルポジションが地上波の最後(8チャンネル)に回ったことが視聴率低迷の原因という声を時々耳にします。しかし、本当のところチャンネルポジションがどれだけ影響しているのかわかりません。むしろ、リーマンショック後番組制作費を削減し、コンテンツのクオリティが低下した結果が数年遅れで現れた可能性があります。

<余談>
決算説明資料から数字を拾いましたが、四半期別に見てみると赤字になった四半期は年度内累積の業績数字しか示されていませんでした。四半期単体の数字を出すと「赤字」が明らかになるので隠したかったのでしょうが、社会の公器たる上場企業としてはあまりに姑息なので笑ってしまいました。
また、2014年の株主総会で質問した16人の株主のうち8人がフジテレビの社員株主、2015年の総会では、質問者17人のうち5人がフジテレビの幹部社員だったことも明らかになっています。こんなところにもフジテレビの隠蔽体質が垣間見えます。

<出典:エキサイトニュース『フジテレビ「ヤラセ株主総会」裁判に判決』2017/03/11> 


■売上と番組制作費のマネジメント

では番組制作費削減の方はどうなっているでしょうか。売上と番組制作費の推移を確認すると、以下の通りです。

売上の低下によって番組制作費の絶対額も減少していますが、売上に占める比率は30%強で横ばいでした。好意的に見ればコンテンツのために一定比率の予算を確保し続けた、意地悪に見ると比率による予算設計という安易なマネジメントを続け、実額の減少が及ぼす影響に目を向けなかった、ということでしょう。

歴史にIFはありませんが、もし本当にコンテンツを大切にするならば、比率による管理ではなく意思を持った投資がなされるべきだったと思います。一度失った勢いを取り戻すのは容易なことではありません。

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■まとめ

フジテレビにとり、「コードブルー」のヒットは久しぶりに明るい話題でした。しかしドラマひとつのヒットだけで業績が改善するわけではありません。また、フジテレビ単体の利益水準もいよいよ喫水線に近づいています。

2017年10月クールの改編説明会で立本洋之編成部長から「非常事態宣言」の発言が出たとのことですが、小手先で番組編成を大幅にいじっていても業績が改善する感じがしません。大切なのは、質の良い番組を制作し、時間をかけて評判を高めてファンを育成し、視聴者がリモコンで8チャンネルを選択している時間を長くすることです。

そのための大戦略がまったく感じられないので、フジテレビの病根は深いとの印象を持ちました。「コードブルー」の映画版を制作しても、FODで配信をしても、フジテレビの視聴率が改善するとは思えませんから。